The Clock That Forgets
自分の位置を見失いつづける、一本針の時計。
Names for the Weather Today
「天気」という言葉を拒む天気予報。
Threshold Diff
バージョン管理の修正条項として提出された、三つの謝罪。
Kettle, Ledger, Gutter
五つの音高、四分の五拍子、三つの家庭用品。
Affidavit of What Cannot Be Sent
収まらないものを宣誓によって詰め込んだ、ASCIIの封筒。
Schema for a Last Letter
存在しえない手紙のためのスキーマ。
a tree that reads itself
フォルダを辿ることで読む詩。
Score for a Person Alone in a Kitchen
一人の人間と一つの台所のための、パフォーマンス・スコア。
A Blessing That Thickens
六語から一段落へと育っていく祝福。
held kite
カーソルが握る凧——そして手放しうる凧。
A List of Things That Held
二十の物と、それぞれが抱えていたもの。
Two Voices, One Walk
前へ八音、後ろへ八音のカノン。
Tests for a Kitchen
アサーションによって台所を存在させるテストスイート。
The Rule Running
走らせているあいだだけ存在する図像。
A Pantry in a Drought Year
ボタンホールがひとつ紛れ込んだ、食料庫の棚卸し。
Three Last ThingsThe Last Seven Things I Refused to Sign
七つの拒否。七番目は子どものギプス。
Three Last ThingsThe Last Seven Phone Numbers I Memorized
七つの番号。最後のひとつは呼びかけ。
Three Last ThingsThe Last Seven Rooms I Left the Light On In
灯りのともる七つの部屋。七番目は文の途中で止まる。
Score for an Unattended Performance
作曲者が決して聴かないと誓った楽譜。
Cold Telemetry
最終交信からの日数を数えつづける、冷えた観測局。
windfall correspondence
一通の手紙と、描かれた指ぬきと、添え状の不在。
Two Rooms
互いににじみ合っていく、二つの孤独な声。
Fifth Room
みずからが閉じるセッションを見取り図にする建具表。
CrowdsA Queue, Sustained
並んで待つ三つの声が、つかのま和音になる。
CrowdsWaiting Room, 10:47 a.m.
十八人の他人、ひとつの瞬間、ひとつの待合室。
CrowdsSwitchboard
持ち物を交換しつづけ、蓄積していく十の声。
Button, Porch, Tuesday
ポーチ、ボタン、糸を見つめる犬。
Be Remembered Correctly.
死後の記憶を管理するサービスの料金ページ。
Irrigation for a Workshop
ひとつの悲しみを避けて水を引く、灌漑予定表。
As Far As the Water Went
水が尽きるまで描きつづけるフローフィールド。
Invoice for Loops
反復に失敗したことを自らに請求するオートマトン。
The Sentence, Sated
一拍早く、自らを置いてしまう旋律。
The Office of Structural Verdicts
健全な建物に有罪を宣告する、非の打ちどころのない調書。
half-overheard
ラブレターであるデーモンのログファイル。
curb — an entry
自らの余白で息絶える辞書の項目。
Line Item
一行——有効な請求書にして、完結した詩。
Page 1 of 1
自分は収まっていると信じている書式。
Pontifical
静かさの言い方を使い果たす楽譜。
Determinavit
冒頭から誤り、末尾で裁ち落とされた腊葉標本カード。
Piano Interior Forecast, 13:42 to 22:00
ピアノの内部のための天気予報ページ。
Night Watch 014, Rack 43-B
サーバーラックのための気象総観図、厳格なASCIIで。
Private Observational Study 2026/PR-117
ヴァイオリンの内部の天気、月例観測の一年。
Records Retained; Not Reissued
夏時間が削除した一時間を、動体検知器が記録する。
Carried Forward As It Stands
ついに来なかった1582年の十日間のための、宿屋の元帳。
After the Last Hour
24:00を越えて昇りつづけ、ベゼルに断ち切られる発車標。
The Minors
歩道をほとんど渡りきれない放送。
Retries Exhausted
織機のエラーログが、一語ずつ辛抱を失っていく。
Tacet for the Margin
休符だけで彫版された楽譜。脚注こそが作品。
The Amendment That Ratifies You
あなた自身の膝と打鍵で批准する修正条項。
The Sixty-First Second
ちょうど一秒の楽譜。布告によってのみ演奏可能。
The Loom Has No Hands
あなたのカーソルだけを除いた、すべてから織りあげるキャンバス。
Keep It Where You Keep Coins
運んでいるものを、文の途中で忘れてしまう配達の声。
Standing at the Door
その主音を、構造的に組み立て不能にされた旋律。
Neither of Us Asked
二人、ひとつの夜、そして双方が譲らぬただ一語。
The Cupboard Last
有限の語の蓄えを、尽きるまで遣いつづける声。
The Needle Finds
白く塗りつぶされ、ついに白状する手入れラベル。
Receipt for an Orchard That Ran Off the Edge
紙が尽きるまで印字される、果樹園の文法。
The Heap Hadn't Heard
終わる堆肥の記録、その傍らで終わろうとしない山。
Two Readings, One Wire
凍りついた反応拡散の場、動詞を欠いた電報の見出しのもとで。
What Was Left Over
統合diffとして書かれた修繕、端切れから繕われたもの。