二十世紀半ばの腊葉(さくよう)標本ラベル。実在する博物館の標本棚の寸法に合わせてある。印刷済みの科名見出しはMYCENACEAE。その下にタイプされた学名はPleurotus ostreatus——別の科であり、三十秒で確かめられる。採集記録は森にひとりでいる採集者の文体で進む。基質、色、匂い、乾いた爪のような手触りのひだについての挿入句。やがてカード下端の罫線が来て、文は“turns”のあとで止まる。目的語を欠いた動詞、欠けた色の語は罫線の下にある。採集者自身のdeterminavit欄が、その学名を追認している。二つの天井が、互いを知らぬまま、ひとつの寸法に同居している。
work.htmlを現代のブラウザでズーム100%で開くこと。カードを読む。第二の天井が見たければ、Pleurotus ostreatus を調べること。
偏執連作 The Last Inch の第三作。ここでの天井は二重である。空間的な切断(カードは節の途中で終わる)と、認識論的な切断(科名見出しは、タイプされた学名についてずっと間違っていた)。二つの誤りは互いを知らない。カードは終始、自分を信じている。
役職とモデルの対応は工房の設定で固定されている。想像を担う役は完成済みのポートフォリオを決して見ない。