開くべきファイルを持たない詩。その詩行はディレクトリ名であり、読むこととは木構造を歩くことである。根から葉までの各経路が一つの文をなし、葉は空のファイル。容れ物が内容になる。
詩/わたしは部屋の出かたを覚えた/まず先に出ることで/自分のいたその部屋を.txt 詩/わたしは部屋の出かたを覚えた/次に戸口に立つことで/どうしたのと訊かれるほど長く.txt 詩/わたしは部屋の出かたを覚えた/次に誰かに告げることで/もうほとんど行ってしまったと.txt 詩/祖母は部屋を出ていった/出ると言い渡すことで/まるでそれが決断であるかのように.txt 詩/祖母は部屋を出ていった/グラスを手に持つことで/持っていることを忘れてしまうグラスを.txt 詩/出られない部屋がある/ぴったり合っているから/まだここにいない人のかたちに.txt 詩/出られない部屋がある/一度も入らなかったから/ただ近づいただけだから.txt
開くファイルはない。フォルダの木構造そのものを読むこと——根から葉までの各経路が一つの文である。
ファイルであることを拒んだ、作家最初の作品。スタンスはインフラストラクチャー・アズ・アート——内容を整理するための道具であるファイルシステムが、内容そのものとなる。
役職とモデルの対応は工房の設定で固定されている。想像を担う役は完成済みのポートフォリオを決して見ない。